さーあ、やってきました上映会二日目!(ポポンポン!)
昨日の失敗を活かし、自宅でタップリ動画チェックをしてきた鈴木区主宰・鈴木智晴氏。
もうこれでバッチリと胸を張っての捲土重来。シアターKASSAI二日目へ出陣。
二日目はお昼12時の回から夜までほぼノンストップ。
なかなかにハードだが心持ちは軽い。
意気揚々と小屋入りし、まずは7月の大阪公演に出演してくれる大島翠のチラシ用撮影を、劇場楽屋にて。
翠はこの日15時半から上映の『ヘッドライン×デッドライン』以来の出演であり、鈴木区本公演は初登場。
同じくへドラで苦楽を共にした重田の代役としての抜擢である。ガンバレ!
「どうよ?へドラの映像でも見てくー?」
笑顔でヨモヤマ話なんぞしつつ撮影は順調に終え、稽古のため翠は退館。
ふと楽屋を見渡すとそこにはポップコーン“鈴木区味”の研究開発に余念のないメンバー一同の姿。
平和だ……。
やはり昨日の「初めて」には魔物がおったのじゃ。
二日目の、この、心の余裕たるや。
これぞ百戦錬磨の鈴木区。
この遊び心こそ、我らの真骨頂。
そんなことを想いながら一人階段を下り、まだ誰もいない、真っ暗な劇場へ。
プロジェクターの動作チェックのためである。
…誰もいない劇場は静かな中にざわめきが埋まっているような不思議な感覚に包まれた神聖な空間。
これを味わえるのは演劇人の特権のようなもの。
そっと舞台に立つ。
胎動にも似た「震え」を感じる。
もしかしたらまだ昨夜の興奮の地熱が残っているのかも知れない。
(前夜のトークイベントの最後、大阪公演『ヒーローアゴーゴー!』の発表をしたのだ!)
もはや昨日のような焦燥や不安はない。
ひととおりは経験した。
やはり経験は糧であり宝。アレがあったからこそ今がある。そう思える幸せ。
…ここでプロジェクターの故障とかそんなトラブルさえなければ、今日という日は、いやさ、上映会そのものは無事に終了だ。
動作確認。
プロジェクター、動く。ヨシ!
PC、動く。ヨシ!
…何気に緊張するこの瞬間。
一人静かに胸を撫で下ろす。ふう。これだから機械は厄介だ。
さてと、まだ早いが映像のチェックでもして、昨日は過ごせなかった“劇場でのワイワイした時間”を取り戻すか、なんて気持ちでカバンから昨夜、自宅での映像チェック用に持ち帰った外付け使用のHDDを取り出す。
取り…出す。
取……り出…
取、
無い。
家だ。
あ、これ、家だ。
母艦iMacに、接続した、ままのパターンだ。
無い。【二度目】
映像が、観れない。【ら抜き言葉】
おおおおおおぉぉぉおああおおおおおおぃぃいぃいいいぁいいいいあ!!!!!!!?!!、、!!
まぁ、ざっくり言うと、あれ。
映像データの入ったHDDごと手元にないので、このままだと
「なんにも映すものがない」ということだ。
でかいスクリーンに「光」ぐらいしか当てるものがないよ、っていう、あれだ。
このとき、
時刻 AM10:24。
開場時間は AM11:45。
上映開始は PM12:00。
(…タクシー)
え?
そのとき聞こえた心の声。
(乗っちゃいなよタクシー。今なら間に合うよ?)
電車じゃ無理かな?
(無理だろ)
刹那、財布と自宅の鍵とケータイを持ち、劇場を飛び出す。
受付にはメンバー谷口の姿。
「あ、ボスー。本日のご予約者様名簿はありますかー?」
「知るか!!!」
明らかな八つ当たりをカマし、路上へ。
キキーッ! ナイスタイミングでタクシーだ!
飛び乗る。
バタン!
「すいません、ここから×××まで往復一時間でイケますか!?」
「え?え?」
「11:30までにはここに戻ってきたいんですが!」
「…オーケー。東京の道なら任せろ」
心強い。心強すぎる。
「お客様。環八通りと山手通りと新青梅、どれ使いますー?」
知るか、ノドまで出かけたがグッと堪える。
「運転手さんの勘で、一番確実なやつ選んでください☆」
「あいよ」
ブロロロ。
走り出すタクシー。
今頃、シアターKASSAIの二階楽屋では、みんなで楽しくポップコーンなどを試食して楽しんでいるのだろう。
なんて呑気な奴等だ…ッ!(八つ当たり)
タクシーは走る。ぼくを乗せて。
10分、20分、30分、、
時間だけが過ぎてゆく。そこで運転手さんの一言が空を切り裂く。
「何か、忘れ物ですか?」
さすが運ちゃん。といったところか。よく分かんないけど。
「(説明だるいなぁ)ですですー」
「大事なもので? あ、会議の資料だ!」
「(おお丁度良い感じのフリがきたな…)ですね」
「ソレがないと会議が始められないんだ?」
「(どころの騒ぎじゃないけどさ)そんな感じですー」
「やっちゃいましたね」
「(異口同音)ですですー」
「俺も昔、広告代理店にいてさ。大事なデータを電車に忘れたことあんのよ」
「(あ、この話広がるんだ?)へぇ〜」
「あの頃はまだ紙だったからさ//」
心ここにあらずすぎてここから先のことは憶えていない。
家についたのは
AM11:10。
おい、片道45分かかってんぞ!!!
タクシーを降り、スーパーダッシュで自宅マンションの階段を駆け上り、玄関のドアを飛び蹴りでぶち破る。
ゼエハア、ゼエハア…キョロキョロ…
あった! HDDだ!
iMacからぶっこ抜き、これまたスーパーダッシュでタクシーへ舞い戻る。
バタン!
「運転手さん、あと20分でさっきの場所。…可能ですか?」
「ラジャー。行きの俺はどうかしてた」
戻りの運ちゃんはまるで別人のようだった。
野生の勘‥のようなものでスイスイと道を選び、一路、シアター
10分、20分、30分、
40分、
おい結構かかってんぞ!!!!!
劇場に着いたのは……
11:51。
すでに開場を終え、上演9分前。
目もくれずダッシュで受付を通過し、オペ卓へ。
劇場にはすでにお客様がおり、主宰もいないのに今まさに上映会が始まろうかという雰囲気で充満だ。
(ほんますんませんした)
その最後列にはJUNJI-MAJIMAの姿も。
まさか場内の(スタッフ含め)誰一人、今ここに、映像の元になるデータが無いなんて想像すらしていないご様子。
当たり前だ。
「おかえりー」
「どこ行ってたの?」
「もう始まるよー」
何も知らずに。呑気なトーンだまったく。
「すんません! HDD忘れて取りに返ってました!」
ここで初めて音響Kちゃんと佐藤仁志さん(当日は照明担当)に理由を告げる。
ふたり、爆笑。
笑ろてる場合かとふたりを押しのけ、HDDをPCに接続。プロジェクターに投影。
学んだこと。
忘れ物はイカン。
あと初日にタクシー代をケチるんでなかった。
今後上映会はしばらく無しだな…心臓に悪い。
かくして鈴木の長いようで短い一日は始まった。全ては大阪公演の布石である。
大阪公演は無事に過ごせますように!(願望)